差動増幅回路の小信号等価回路への書き下し1

概要

小信号等価回路の使い道がよく分からない人向け、小信号等価回路の具体的な使い方・書き下し。

長くなりそうなので数回に分ける予定。

 

前書き

大学の電子回路の授業で小信号等価回路を習いましたが、当時は何に役立つのかさっぱりわかりませんでした。

何でこんなツール使うの?そのまんまの回路じゃだめなの?などなど

自分にとって興味のある応用がある内容でないと、やる気がわかず理解が進まないタイプなので、「ミラー効果」とかの一部用語を理解したぐらいのレベルでした。

期末テストで小信号等価回路の配点が少なかったので単位を落とさずに済みました。

なので自分なりに初学者が興味の持てる小信号等価回路の説明をしたいと思います。勉強の助けになれば幸いです。

 

小信号等価回路とは?

私が考える小信号等価回路の概要は以下5点です。

  1. ディスクリートトランジスタ類を簡便に扱うためのツール
  2. 直流(DC)的に(とりあえず)動く状態に設計した後、所望のAC的な特性を追求するためのツール
  3. 高調波歪みとかは別途検討する(あくまでも入力信号が線形とみなせる増幅・減衰する動作範囲を扱う、線形性の度合いは用途による)
  4. トランジスタ、FETは基本的に電圧入力ー電流出力素子として扱う
  5. 手描きできる回路図レベルでAC的な問題を単純化し、所望の性能を満たさない原因箇所にあたりをつけるためのツール

 

 

多少1~5で内容にかぶりはありますが実感はこんなものです。

ディスクリート半導体は流す電流、温度、印可する電圧で特性がコロコロ変わる代物なので、DC的特性、AC的特性、過渡的特性等に問題を分けて単純化しないと設計上混乱の元でしかありません。

 

とりあえず大部分の用途で問題になるのは回路の利得・帯域幅・位相回転です。

小信号の範疇に絞ればこれらのAC的な特性は単純化して扱えます。

雑に言えば四則演算(+ラプラス変換の基礎知識)の範疇で設計できます。

後は各種定数の大小と素子が入る場所の問題です。

 

 

第1回はとりあえずここまで。

 

このシリーズ、最終的には

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最終的な解析対象回路予定

こんな感じのオペアンプ+出力段トランジスタで構成される

簡易レギュレータの安定性解析を行いたいと思っています。

オペアンプディスクリートトランジスタで作る簡単な奴。

DC的にはざっくりで、AC的な小信号等価回路を使った書き下しを考えています。

Q1に流す予定のバイアス電流と発振せずにぶら下げられるC1の大きさの関係を

ざっくり10%ぐらいの精度で見積もれる式で出していきたいです。

 

次回はトランジスタ1個の小信号等価回路への変換についてです。