機器性能評価の基本の基本
今回の記事も分かってない人が多くて困った事多々ありだったので書きました。
電子機器のカタログに書いてある性能は基本的に何らかの測定器で性能評価した成績を元に書かれます。
それ自体は良いんですが注意する必要があるのは、じゃあ使った測定器の性能は大丈夫なの?って事を常に意識していて欲しいです。
大原則はこの関係が成立している事
評価したい対象の性能<評価に使う測定器の性能
具体的な例を出すと
3千円くらいで売っているテスタなら
大体1.5Vの電池電圧を10mVの桁まで表示してくれます。
ただ、本当に表示されている値が正しいのか?って事を証明するには
余裕を見ると同じ電池の電圧を計ったときに
1mV以下の桁を正しく表示してくれる測定器で確認した証拠が欲しいところです。
で、ここからが困りもので
その手の高精度測定器というのは基本的に低精度測定器よりも環境変化に弱いです。
高性能出すために限定条件をつけているとも言います。
HUNTER×HUNTERに出てくる念能力の制約と誓約みたいなもんです。
例えば私のプライベートで持ってる秋葉原で買ってきた3千円ポケットテスターですが、
メーカーのHPの製品カタログに書いてあった仕様にはこうありました。
動作温度:湿度: 0℃~40℃、湿度80% RH以下 (結露のないこと)
屋内で人間が留守にする間(空調止まっている)の温度変化をカバーするぐらいの動作温度ですね。
で、同じメーカーで、この手のテスターの出荷検査に使う測定器(標準校正器)があったので
こちらのマニュアルを見てみるとこう書いてあります。
使用環境: 5℃~40℃ 70%RH以下(結露のないこと)
確度保証環境: 23℃±3℃ 70%RH以下(結露のないこと)
予熱時間 :スイッチ投入後、約 1 時間以上
使用環境自体は大差ないですがポイントは次の行の確度保証環境。
23℃±3℃って書いてあります。仕様に書いてある性能を発揮する保証ついているのはこの範囲って限定しています。
「そこから外れた温度で使う場合、表示は出るけど正しいかどうかの保証は無いです。お客様の自己責任です。」
という訳です。
しかも、予熱時間が規定されていて使いたいときにすぐ使える訳ではありません。
少なくとも空調がガッチリ効いた部屋に置かれて会社の就業時間中は電源ONしっぱなしが前提の測定器です。
空調効かない部屋に出す使い方自体が間違えています。
以上のような前提をちゃんとわきまえて測定器を使う・製品評価をして欲しいなぁ、とたまに無茶な事を言ってくるお客様相手に内心思っています。
特注とかで変なオプションつけるのであれば尚更に。
松岡修三みたいな思い込みとか精神論が入った主張を電子機器の公的な評価をする場に持ち出さないでいただきたい。
・精神論で電子機器の性能は変わりません。
・測定結果ぶれるようであれば、大抵の場合、作業者の操作に無理があります。
・正しく計測可能な数字に基づいた話をお願いいたします。
事前準備をきっちりした上で現場ではスタートボタンを押しただけで
きっちりした数字が出てくる測定系を組めるのが理想型です。
人間が操作する余地は最小限にしておきたいものです。何回も同じ測定するなら尚更。